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Walking wounded

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ディジャヴ

行ったことがないのに、あると思える。会ったことさえないのに、いつも会っているような気がする。
わたしたちは大きな橋をいくつも渡り、焼け付くようなアスファルトの上を歩き、海を越え、砂浜の上でサンダルを脱いで裸足になり寝ころんで空を見上げる。遠く、低いグレーの空に東京タワーが突き刺さっていた。
あなたと同じ空を見上げたことなどないのに、毎日そうしているような気がする。なぜだろう。ぎざぎざに切り込んだわたしの髪をなんの匂いもしない湿った海風がさらっていく。水面には輪郭のない光がそこかしこに漂っている。光のせいかも知れない。ざらざらした光。ジョナス・メカスのフィルムのように、奇妙になつかしい感触さえある。
少しずつ日が傾いて、人工の砂浜に残したわたしの足跡が風に崩れていく。わたしたちは日が暮れるまで、長い間ならんでそれを見ていた。
by unchained_melody | 2007-11-11 17:50